◆先日、西伊豆スカイラインと直結し、船原峠と風早峠を結ぶ「西天城高原線(静岡県道411号)」(平成11年3月開通)を通ってきました。

コピー ~ 西天城高原線(風早峠から)
西天城高原線(風早峠より)

この道路は、伊豆の道路網の一環として位置付けられ、当地域の主要産業である観光を支援するとともに、災害時においては国道136号と県道59号伊東西伊豆線の代替道路として役割を担う重要な路線として整備されました。また、富士箱根伊豆国立公園域内に位置し、豊かな自然や景観地の利用が身近になることで、多くの利用者に親しまれ、自然ふれあいが増進される役割を担う路線でもあります。(伊豆山稜歩道が本路線に並行しています。)

 

標高約600m~900mの山の稜線を走り、一帯はリョウブやエゴノキなどからなる落葉広葉樹二次林とスギ・ヒノキ植林が大部分を占めておりますが、南部地域は(風早峠から魂の山にかけて)ミヤマクマザサが優占するササ草地が広く分布し、独特な景観となっています。また、他にも特徴的な植生として、魂の山一帯の風衝地に発達したアセビ-チチブドウダン低木林、北部の山稜や尾根地に点状・帯状に分布するイヌツゲ林などが挙げられます。

コピー ~ ササ草地(風早峠)
ササ草地(風早峠)

このように、国立公園内に位置し、豊かな自然環境を通過する道路の整備にあたっては、静岡県によるエコロード事業として事前に環境調査が行われ、路線周辺の野生動植物や生態系に配慮した様々な保全対策が施されました。
例えば、長大な切土部はトンネルに、高盛土は橋梁とすることにより、土地の改変を減らし、線形の見直しにより自然性が高い植生(イヌツゲ林など)を迂回し残しました。また、動物横断経路を設置することにより大型哺乳類の生活圏の確保・交通事故防止や、道路構造物への遮蔽植栽による風致景観への影響低減を図りました。その他にも様々な取組が行われ、パンフレットによる取組の紹介もされました。
本路線工事中及び供用後3年目まで、モニタリング調査も行われ、道路建設が自然環境に与える影響やその後の回復過程、エコロード対策の効果や課題が整理されました。

コピー ~ パイプカルバート
パイプカルバート(動物移動経路)

コピー ~ Ⅴ型排水溝
V型排水溝(小動物の落下事故を防ぐ)

コピー ~ 遮蔽植栽
擁壁の遮蔽植栽(ツル植物で被覆)

コピー ~ パンフレット
取組紹介のパンフレット(生きとし生けるものにやさしい道づくり)

西天城高原線の少し先に、西伊豆町営レクリエーション施設「西天城高原 牧場の家」があります。自家製牛乳を使用した濃厚ソフトクリームや、そば・うどん・塩かつお茶漬けなどの軽食が取れ、牧場の家からの景色も格別です。

コピー ~ 牧場の家
牧場の家(レストラン)

コピー ~ 牧場の家からの景色
牧場の家から宇久須の街と駿河湾が一望できます。
(写真では宇久須の街がうっすらとしかみえませんが)

 

(株)環境アセスメントセンターの実績
 当社では、本道路計画に対して環境事前調査を実施し、その調査結果に基づいた自然環境保全対策の検討、保全対策(注目すべき植物の移植)及び工事中から供用後のモニタリング調査の実施など、本エコロード事業に大きく携わりました。
また、本エコロード事業の普及を図るためのパンフレットの作成、各種環境対策の効果の分析・環境対策の改善提案を目的に設置した学識経験者を交えた「西天城高原線環境調査委員会」の運営補助なども実施しました。